17世紀前半にラテン語で刊行されたレメリン (J. Remmelin) の著書「小宇宙の概観ー男女人体解剖図」の英訳版 (A Survey of the microcosme:or the anatomy of the bodies of man and woman )」1702年 ロンドン (この版には初版にない男女図1枚が増補されています) 42×31cm 11頁 銅版図4枚 貼込み図約60枚 これは「解体新書」に先立つ日本最初の解剖図「和蘭全軀内外分合図」の原本で、近代の飛び出す絵本(ポップ・アップ)や仕掛け本の先駆となる貼り込み様式によって3種の大型図の中に総計60枚の精密な図版を入れ子式に重ねて人体内部の組織・器官の実際を具体的に示した画期的なものです。 これは銅版画による図版の精密さとリアルな印象のために大反響を呼び各国で訳本が作られましたが、そのオランダ語訳が長崎で日本人に知られて幾つか翻訳写本が残され、そのうち本木了意(庄太夫)が解体新書より92年早い天和2年(1682)に訳出した原稿が明和9年(1772)に「和蘭全躯内外分合図」と題して出版されました。この版本には現代の複製本がありませんが福岡藩の蘭方医・原三信が訳した写本は「日本で初めて翻訳した解剖書」(思文閣 1995)と題して出版されており、そこに原本と写本の対照図が掲載されています。 本書は3つの大型解剖図を主体とし、第一図には男女2体が向い合わせに、また第二図と第三図にはそれぞれ男、女が単独で描かれており、各図の貼り込み構成は下記のようになっています。 1.両性図は男性部に12枚、女性部に2枚、眼部に5枚、子宮部に4 枚、象徴部に4枚 2.男性図は頭部に7枚、体幹部に14枚 3.女性図は頭部に4枚、体幹部に8枚 総計60枚 掲載した画像の1〜4番は男性図と女性図の原本と訳本の写真を並べたもので5番めは両性図の原本図像です。下の詳細写真に貼りこみ図版の若干が紹介されており、「和蘭全躯内外分合図」の展示写真がありますのでご覧ください。 コンディション:厚紙の表紙は経年の劣化と手擦れで汚れており本体の銅版画も写真に見られるように汚れ・しわ・傷みがあります。この本はよほど多くの人が見たり触れたりしたらしく、図版を始めとして汚れがひどいB級品ですが英訳本なので付属した詳細な説明文の内容を知るには大変便利です。この本のラテン語、英・独・仏・蘭語訳の諸本には様々な異同があるので研究用には数種揃えるのが適切です。英語版より大型で精緻な版画を記載したドイツ語版も出品中ですので参照して下さい。